マラッカ航海日誌補遺

「日付のある紙片」の過去記事。船便のためかなり遅れて届きます。今日のニュースと書いてあっても一ヶ月前の出来事であったり。速達は<a href="http://iscariot.cocolog-nifty.com/kuantan/">日付のある紙片</a>

チャクリ王朝(現タイ王朝)と清朝(中華皇帝)との関係

泰国の現王室の初代、鄭華(ラーマ1世)が即位し、チャクリ王朝を開いたのは1782年。中国は清の時代。ラーマ1世は「乱心をきたしたトンブリー王朝のタークシン王を殺して即位した」ということになっている。

ちなみにトンブリー王朝を建てて一代でつぶしたタークシン王(タクシン首相とは関係がない)は「潮州系中国人の子で、父親は賭博場で税徴収をしていた」といわれ本名は「鄭昭」といった。

ラーマ1世こと鄭華は、トンブリー王朝の臣籍に属するマフィアの親分のようなものだったが、要するに謀反によって王朝を乗っ取ったのである。(「乱心をきたした」国王を殺しというが、現国王プミポン氏もすでに側近の医者からは半ば乱心扱い、ボケ扱いされているといううわさがある)。

以上のことは「タイ国王の由緒」というエントリーで紹介したとおり。

今回提起したい問題は、現タイ王朝・チャクリ王朝と中国皇帝(清朝)との「中華秩序における位置関係」の問題である。これは日本と無関係なことではないと思うからだ。

ラーマ1世が即位したとき、他のアジアの王朝同様、当時の中国政府に建国の報告をした。その後中国から返ってきた答えは「シャム国(タイ国)の新しい王鄭華は、父タークシン王の意志と遺領を受け継ぐことを認める」となっていた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/
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康煕・雍正(ヨウセイ)・乾隆(ケンリュウ)帝三代が、清の最盛期だ。この時期、モンゴル、チベット、東トルキスタンを征服し、元に次ぐ大帝国を形成した。また、李氏朝鮮、ベトナム(越南国阮朝)、タイ(チャクリ朝(現王朝))などが属国となった
http:あの光//homepage2.nifty.com/ekondo/rekisi2/ching.html

 
つまり現タイ王朝はその成立時点において清に朝貢しており、中華秩序において中国の属国であることを認めている。そしてその後も「独立宣言」をしたことはないということである。

日本の王朝も神代の時代には当時の中華皇帝に「報告」していただろうが、その後、明確に天皇と中華皇帝は対等であることを宣言している。つまり独立宣言、対等宣言をしている。(隋がすでに漢族の王朝でなかったこともあるのかもしれないが)。

チャクリ王朝は清朝の属国になっただけであって今の中国とは関係がない、というかもしれない。しかしそれは中華の論理では無理だろう。

中国は易姓革命の国で、天子はもともと万世一系ではない。いまはたまたま中国共産党が中華皇帝の座についているだけである。

中華秩序の論理から言えば、タイの現王朝ははっきりと中華皇帝の柵封を受けているのだから、タイ国王は中華皇帝(いまは中国共産党)の臣下の地位にあるということになるだろう。

そうであるとすれば、タイ国王の下にある者が、中華皇帝のはるか下位にあり、中国に隷属するのは当然である。

つまり日本人がタイ国王の臣のように振舞うということは、自動的に、日本人が中国の臣民よりはるか下方に位置して中国に隷属していることを意味する

対等であってもダメである。

というのは、「日本の天皇がタイ国王と対等である」ということは、中華の論理から言えば、タイ国王が中華皇帝の臣下である以上、天皇はタイ国王と並んで中華皇帝の臣下の位置にある、ということを意味するからである。

だから外交儀礼上、日本の天皇がタイ国王と対等であるかのように振舞うことは、中国との関係で日本にとって非常にまずいことだということになると思う。

数年のうちにタイ国王は死去し、皇太子が即位する可能性が高い。

その場合には天皇陛下も何らかの形で儀式に関与せざるを得ないことになるだろう。

そういう場合でも、天皇がタイ国王と対等に振舞うことは中華皇帝(中国共産党)の下位に身を置くことを意味するのだ、ということを日本政府はよく認識すべきだと思う。

そして日本政府、外務省、宮内庁は、タイ国王戴冠60周年記念式典のときのような失態を繰り返させないようタイ政府にあらかじめ強く警告しておくべきである。あの時タイにいてテレビを見ていた日本人はみなあの光景を見ていたのである

しかしタイ王室が戴冠60周年記念式典で「礼儀知らずの野蛮さ」を暴露してくれたことは、彼らが中華秩序云々未満=文明の外にあるということを見せ付けてくれたという意味では日本にとってむしろよかったといえるのかもしれない。
 

  1. 2008/04/07(月) 00:58:10|
  2. タイ
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