マラッカ航海日誌補遺

「日付のある紙片」の過去記事。船便のためかなり遅れて届きます。今日のニュースと書いてあっても一ヶ月前の出来事であったり。速達は<a href="http://iscariot.cocolog-nifty.com/kuantan/">日付のある紙片</a>

ダボス会議でマレーシア首相「イスラムと近代化」(苦笑)

品性(がない)、教養(がない)、知性(がない)、どの言葉を使って「それ」を表現すべきか迷うようなことを、東南アジアではしばしば経験すると思う。タイヲタになっちゃってるような人でなければ賛成してくれるのではないか(マレーヲタでも同じだが)。

下手に「知性がない」などと言おうものなら、俺はイギリスの(アメリカの、あるいは両方の)こんな有名な大学を出て学位をとった。お前なんかより英語もぜんぜんぺらぺらだとか言われてしまうだけなので手に負えなかったりするのである。

品性や教養は欧米の「伝統ある立派なキャンパス」でのみ培われるものと信じて疑わない欧米人も少なくないようだ。アメリカ東部出身のちゃんとした大学出た姉ちゃんと話していたとき、何かのはずみに勉強はどこでもできるんじゃないですかとか言ったら、皮肉に笑われて学問にはアイビーリーグのような「キャンパスの環境」が必要なんだいわれてしまったことがある。そんなこともわかってないのかというあからさまに見下した態度をされたので、そんなことを口走ってしまった自分がなんだか「夜学に通う植字工」にでもなったような気がして惨めったらしい気分になった。しかしああいう基準から言うと日本に一流大学はほとんどないということになってしまう。「環境」には広い贅沢なキャンパスだけでなく大学の歴史と伝統と人脈も含まれるだろう。欧米でなきゃはなから成り立たちようがない「環境」、という特権である。

東南アジアレベルのエリートならなおさら即物的で、そういう伝統あるキャンパスで作った「教養ある」白人の「友人たち」がたくさんいること、彼らと因習的な会話ができることが直ちに教養や品性そのもの、ということになる。

つまりいかにそれらしく振舞いそれらしいことをしゃべるか、それらしい文章を作り上げるかということである。それらしくマネすることでせいいっぱいだから、何か新しいものが出てくる余地はもちろんない。

思いつきだけど、アリストテレスの「形而上学」の翻訳を町の本屋で買える国が世界に何ヵ国ぐらいあるだろうか(岩波文庫のアレを読んで何か理解できる人がいるのかどうか私はよくわからないが、そういうことは問わないことにして)。カントの「純粋理性批判」の自国語翻訳が出ている国が何ヵ国あるだろう。プルーストの長い小説の全訳が出ている国は・・・・。世の中には持ってるだけで価値がある本もあるんだろうと思う。ちょっと読んでみて頭を抱えて、わからない、なんだろうこれ、さっぱりわからん、こんなことあれこれ言っている人がいるんだ、と思うだけでも、何も知らずに終わるよりはいいということもあるような気がする。しかし、そういうのを外国語で読んでしまうとまた、何もわかってなくてもわかったような気になったりすることがある。外国語で読んだ、単語の意味と構文がわかっている、つまり外国語の文章の意味がわかった、→内容がわかった、という錯覚に案外陥りがちなものである。英語屋に馬鹿が多いというのもこういうところに原因の一つがあるのではないかと思う。ドイツ語なんかもちょっと勉強すると論文読む分には日本語よりも読めるぞとか思ってしまうことがあるだろう。
  

本題に戻ると、アブドゥラ首相はヨーロッパに出て行くといつも、キリスト教とイスラム教との共通性(旧約聖書を共有し唯一の神を信仰する)を唱えて「イスラム世界と西側世界とが共存して進歩発展していくことができる」ことを強調する。要するに半分自画自賛のようなおべんちゃらを言って、白人に媚を売りつつ自分たちも欧米白人「のようなもの」なんですよ、と強調する。

彼らが欧米向けにこういう演説をぶつときには、日本なんか世界に存在しないかのようである。日本なんかほとんど居場所がないような世界像を開陳して白人に媚を売る。

今度のダボス会議でも、キリスト教とイスラム教とは「二つの偉大な文明」である、と持ち上げていた。

私はよくはわからないが、しかし、マレーシアって、あるいはマレー人って、ムスリムの世界において、世界に向けて「イスラム」を代表してものを言って良いような格式の高い地位にいるのか?ちょっと素朴な疑問を感じる。

ヨーロッパだって一概に「キリスト教世界」と決め付けられることも迷惑だったりするのではないか。イスラム教徒から「旧約聖書」や「唯一神論」を理由に「一緒でしょ」と擦り寄られるのにはますます困惑するのではないかという気がする。アメリカの福音派ならどうかわからないが。アブドゥラ首相が期待するほど宗教的な人がヨーロッパに多いわけでもないだろうし、信心深い人でも自分が信仰しているのは「形をイメージしてもいけない唯一絶対の神」ではなくて、像にもなっていてはっきりイメージできるイエスやマリアだと思う人が多いのではないだろうか。

この声明で一番こっけいなのは、「イスラムは近代化と両立する」という例として「高いビルがいっぱい立ってます」という話を出しているところ。「ブルジ・ドゥバイ」は世界一高いビルで、KLのツインタワーは世界一高いツインタワーだ、それがイスラムの近代性の証左であるかのように言う。

ブルジ・ドゥバイを建てたのが誰か知りませんが、ツインタワーはマレーシア人が建てたんじゃないでしょうが。

第一、ビルは高けりゃいいってもんじゃないんだし。マレーシアなんか地震がないから耐震構造も必要がない。マンションなんかも日本人の目から見るとスカスカで今にも倒れそうな怖いような高層ビルばかり。

カネがあればビルは建つわけで、高いビルが建ってますってことは、地震がない国ですということとカネもってますということの証明でしかない。カネもってりゃ近代的だと信じてるのがこのイスラム国の首相ってことですね。知性も教養もない者に怖いものなし。

でも「後進国の猿は叩かない」というのが白人紳士の暗黙の了解事項なので(猿の癖に生意気に経済大国になったりしたら叩きまくるが)、マレーシアは陰で笑われているだけですんでいるようだ。

http://www.kln.gov.my/?m_id=15&hid=597

4.         No faith, least of all Islam, is against progress and modernization. Indeed, the teachings of Islam are especially attuned to modernization. Muslims are explicitly enjoined to pursue knowledge, which is the bedrock upon which all progress and development is built.    In Islam, work is deemed a form of worship.

5.         Modernity is indeed evident in the Muslim world for all those who wish to see.   The world’s tallest building is now taking shape in a Muslim city.   It is the Burj Dubai. The Petronas Twin Towers are the tallest twin towers in the world.   They too stand in a Muslim city. The largest Muslim country, Indonesia, is a democracy. Muslim women have been presidents and prime ministers.

>In Islam, work is deemed a form of worship.

そのわりにマレー人は働きませんね。In Japan,ならわかるんだけど。

ひとつだけマレー人の評価できるところは、トゥドゥンと伝統衣装を守っていることだろう。パンジャブ発祥のクルタ・スルワールなどと同じく、民族衣装がたまたま日常着にも適していたからだろう。
 

  1. 2008/05/07(水) 20:54:02|
  2. マレーシア
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